2015年にロシアで制作されたセルゲイ・ポポフ監督による戦争アクション映画スターリングラード大進撃 ヒトラーの蒼き野望。
モントリオール映画祭でエキュメニカル賞を受賞するなど国内外問わず高い評価を得ています。
スターリングラード大進撃 ヒトラーの蒼き野望あらすじ
1942年のドイツ軍による「ブラウ作戦」に対峙するソ連軍の快進撃を、リアリティー溢れるタッチで描き切った「スターリングラード大進撃 ヒトラーの蒼き野望」。
無差別な爆撃が繰り返されていく中を、無関係な一般市民が逃げまとう様子。
戦争の極限状態と軍隊内部の非人道的コントロールが、ひとりの人間の心の動きを奪っていきます。
銃殺刑を命じられたソ連軍士官と、彼を監視する敵方兵士が絆を育んでいく戦争ドラマです。
非なる者を排除する人間の残酷さ
当時の異質な存在や和を乱す人たちをあっさりと排除してしまう様子。今の時代に繋がるものがあります。
与えられた任務と人道的な立場のはざまで苦悩する中尉のオガルコフ・セルゲイを、ユーリー・ボリソフが静かな演技で表現。
軍規に違反して死刑判決を受けても、自らの信念に屈しない姿が感動的です。
アミール・アブディカロフが演じている監視役のズバラエブとの間に、友情とも敵対とも違う奇妙な関係が生れていくシーンが印象深く、ここが「スターリングラード大進撃 ヒトラーの蒼き野望」の一番の見どころです。
ズバラエブとオガルコフの不思議な旅
とある事件をきっかけにして、ふたりの奇妙な旅が始まります。
憎まれ口をたたき合いながらも、徐々に信頼関係を築き上げていく姿が微笑ましい。
豊かな自然に囲まれている風景や穏やかに流れる時間の中で、しばしの安らぎを得るオガルコフとズバラエブに心温まるものがありました。
引き裂かれるズバラエブとオガルコフ
やがてはふたりの間を引き裂いてしまう、残酷な戦争の現実。
焼け跡から拾った品物で物々交換をしたり露天商を開いたりする市民の生きざまには、戦後の日本の闇市にも繋がるようなエネルギーとしたたかさが溢れています。
どんなに困難な状況に追い込まれても、笑顔を失うことのない人々の姿には胸を打たれました。ズバラエブが規律や職務を逸脱してまで伝えたかったメッセージについて考えさせられました。
幾多の修羅場を乗り越えて、オガルコフがクライマックスシーンで見た開放感溢れる風景が忘れがたいです。
まとめ
ヒーローでも歴史に功績を残す偉人でもない、名もなき兵士たちへのレクイエムが込められていた「スターリングラード大進撃 ヒトラーの蒼き野望」。
時代の流れが昔に逆行するような今だからこそ、幅広い世代の人たちに見ていただきたい作品です。