映画「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」は、19歳でイギリスのロイヤルバレエ団の主役級ダンサーとなった天才プリンシパルにカメラを向けている傑作ドキュメンタリー。
この映画の見どころは?
若くして全てを手に入れてしまったセルゲイ・ポルーニン の栄光だけではなく、スターの座からの転落や引退、その後の人生の苦悩も映し出しています。
本人や家族、さらには奇妙な縁で繋がった関係者たちへの真摯なインタビューが見どころです。
また、鍛え上げたしなやかな美しい身体もみどころです!
天才が見せた一瞬の輝き
2011年のセルゲイ・ポールニンの来日公演を見ることができた数少ない日本の人は幸せです。
プリンシパルとしては余りにも短すぎたその輝きが、この映画の中からは伝わってきました。
ウク ライナの労働者階級の父親と母親に育てられた平凡で朴訥な青年が、何故世界最高峰のバレー団で主役をおどることができたのか、この映画を見た誰しもが疑問に思ったはずです。
そこには本人のたぐいまれな才能や壮絶な努力だけではなく、世界中から優秀な人材を引き抜いていくロイヤル・バレエ団の独自のスタイルがあったからなのかもしれません。
栄光と名声からの転落へ
若干19歳で全てを手に入れてしまったセルゲイの苦悩が、スティーヴン・カンター監督の独特なカメラワークから感じ取ることができます。
豊かな才能を持て余してしまうのは、人一倍感受性が強すぎるからなのかもしれません。
バレエ団を電撃引退してからは、ドラッグやパーティーなどのさまざまな悪意に満ちた憶測が飛び交ってしまいます。
勢いがあるときは多くの取り巻きが集まってきますが、風向きが変わったとたんに周りは手のひらをあっさりと返し、セルゲイだけがその流れについていけません。
もう一度輝くためにセルゲイが選んだ道
衝撃的にバレエの世界から離れたセルゲイ・ポールニンが次に踊るステージに選んだのは、アイルランドのミュージシャンであるアンドリュー・ホージアのミュージックビデオの映像の中でした。
あらゆるしがらみから解き放たれたその踊りは、自由奔放で爽快感を感じることができるはずです。また写真家 のデビッド・ラシャペルとのコラボレーション企画には、幅広いジャンルへの進出の決意の表れなのかもしれません。
一度はあきらめかけてしまった夢に向かって再び踊り始めるその姿を、バレエ関係者だけではなく多くの人に見て欲しいと思います。