映画「ぼくと魔法の言葉たち」は、2歳で自閉症と診断されたひとりの少年オーウェンにカメラを向けたドキュメンタリー映画。
映画「ぼくと魔法の言葉たち」は、2016年のアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされたことで話題になりました。
ディズニー映画を見ながら徐々に言葉を取り戻していく様子が、家族の愛とともに描かれている傑作になっています。
劇中に登場するディズニーから使用許諾を得た数多くのアニメーションも美しいです。
失われた言葉を求めて 映画「ぼくと魔法の言葉たち」
深い孤独の中に包まれていたオーウェンに手を差し伸べたのは、ジョ ン・マスカーとロンクレメンツ監督の映画「リトルマーメイド」の中に登場するオウムでした。
作られたアニメーションの言葉によって命を吹き込まれた少年が、現実の世界へと歩き始めていく様子が感動的。
ディズニーのキャラクター「イアーゴ」になりきることで息子から言葉を引き出そうとするサスカインド家の父親の姿には、多くの人が胸を打たれたはずです。
時代とともに家族のかたちやあり方は変わっていきますが、お互いを大切に思う気持ちには揺るぎないはずです。
映画「ぼくと魔法の言葉たち」を通して訴えかけて
2010年にアフリカ系アメリカ人として初めてアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞を受賞して いるロジャー・ロス・ウィリアムズの栄光だけではなく苦悩も伝わってくる映画になっています。
言葉を奪われてしまうことの恐怖を何よりも知っているからこそ、自閉症のオーウェンに対して優しさを忘れずにカメラを向けることができるのかもしれません。
ユーモアセンスたっぷりの映画の中にも、時折鋭いメッセージがあるのは、貧しさや人種差別をテーマとして創作活動を続けていくところに、自らのルーツを信じている監督の想いなのでしょう。
ロジャー・ロス・ウィリアムズ監督他作品
理解を深めていくこと
自閉症からの社会復帰は本人の努力だけでは不可能なはずです。
この映画で描かれているサスカインド家のように家族の絆やもっと大きな社会的な支援が必要になっていきます。
異質な存在を簡単に排除してしまう今の時代の風潮や流れについても考えさせられました。
社会が寛容性を持って多くの存在を受け入れようとすることで、スクリーンの中で輝いていたオーウェンのような子供たちが増えていくはずです。
物質的だけに恵まれている豊かな社会ではなく、多様な生き方を選ぶことができる精神的にも豊かな社会へと変わっていけることを感じました。