映画「マリアンヌ」は、第二次世界大戦の混乱を舞台にしてレジスタンスと諜報員の悲劇の恋を描いています。
陰謀渦巻くアフリカ大陸のモロッコから激戦地フランスへと、映画の舞台が世界中に飛び回っていくところに引き込まれていきます。
忠誠心と純粋な心の間で揺れ動くひとりの人間の姿を、ブラッド・ピットが熱演。
誰かを信じることの難しさだけではなく、誰かを愛することの素晴らしさも伝わってくる映画になっています。
自然の偉大と歴史の重み 映画「マリアンヌ」
「マリアンヌ」の物語前半にスクリーンに映し出されるアフリカ大陸のモロッコの砂漠の風景からは、 自然が持っている雄大な力や神秘を感じることができます。
一方では荒れ狂う大自然の中心に投げ出されてしまったときの、ひとりの人間の寄る辺のなさやはかなさもひしひしと。
映画の後半にはヨーロッパでの美しい街並みや歴史と文化を感じることができる建築物の風景が、ロバート・ゼメキス監督の独特のカメラワークから眺めることができます。その積み重ねてきた歴史をあっさりと爆撃で破壊してしまう、人間の愚かさ。非常に考えさせられます。
ロバート・ゼメキス監督作品
真実と偽りの間で揺れる
「マリアンヌ」に登場することになる個性豊かな多くのキャラクターたちは、みな多かれ少なかれ自分の本当の姿を隠すために嘘をつき続けててしまいます。
それは第二次 世界大戦という歴史的な異常事態の中に限定されたものではなく、我々が生きている現代での日常の中にも起こりうる不確かさなのかもしれません。
マリオン・コティヤールが演じているマリアンヌ・ボーセジュールの美しい姿の中にも、どこか現実感のない悲しみが上手く表現されています。
真実を手に入れるためには、大切にしているものを手放さなくてはいけない運命の残酷さは、胸に迫る来るものがあります。
マリオン・コティヤール出演作
最後に残るものは何か
晴れない疑惑の中で国や軍への忠誠かそれともすべてを捨て去って愛する人を選ぶのか、主人公のマックス・ヴァタンは重大な選択を迫られます。
どちらかを選んでも幸せになることはできないのは一目瞭然と していて、それはまるで勝っても負けても何も手に入れることができない戦争の無意味さを暗示しています。
誰かを愛するということはその人の仮の姿だけではなく、偽りの姿も一緒に受け入れていかなければならないのかもしれません。
「マリアンヌ」は、喜びも悲しみもすべてを分かち合って生きていくことの難しさが伝わってくる映画になっています。