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あだち充が描く純粋ラブ・ストーリー「みゆき」

主人公の高校生・若松真人は、夏休みにクラスのルームメイトの男女8人で海へ泊まり込みのアルバイトに出かける。

その中には真人が思いを寄せる学年一の美少女・鹿島みゆきもいた。ふとしたきっかけで鹿島も自分に思いを寄せている事を知った真人だったが……。

 

みゆきあらすじ

その海の家にお客さんとしてもうひとりの美少女がやってくる。目が合っただけで意気投合した真人と美少女だった。

真人はアルバイトが終わった後にその美少女と会う約束をする。その子は、6年ほど離れて住んでいた腹違いの妹・若松みゆきだった。

 

ラブ・コメ作家あだち充がスポーツ抜きで書いたラブ・ストーリー

漫画「みゆき」は、ラブ・コメディー作品ですでに多くのヒットを飛ばしていたあだち充が、80年代初頭に書いた作品です。

80年代の少年漫画誌におけるあだち充と高橋留美子(「うる星やつら」「めぞん一刻」などの作者)は人気を二分するほどのラブ・コメディ作家で、あだちの「ナイン」「陽あたり良好!」「みゆき」「タッチ」という作品はアニメ化されるほどの人気を博し、彼を一躍ヒットメーカーに押し上げました。 

 高校野球を題材にしたあだち作品

 

競泳を題材にしたあだち作品

 

あだち作品は、スポーツを絡めたものが多いですが、「みゆき」はラブ・ストーリーだけに焦点が当てられて青年期の淡い恋の感覚が強く出た作品になっています。

 

出会った瞬間から惹かれあったふたりは兄妹

真人と腹違いの妹のみゆきは、出会った瞬間からお互いに惹かれあいます。

海でみゆきを見かけた瞬間から真人はときめき、みゆきは目があった瞬間から真人に微笑みかけます。

お互いに次に会う日取りを決めて別れますが、次に二人が出くわしたのは、自分の家の別荘に真人が帰った時でした。

そこには6年ぶりに日本に帰ってきた妹のみゆきがいたのです。ここから、親のいない家での真人とみゆきのふたり暮らしが始まります。

腕を組んで一緒に買い物に行き、ふたりで映画も観に行きますが、ふたりは兄妹。たがいに魅かれながらも、一定の距離を置かなければならない関係が始まります。

 

二人のみゆきの間で揺れる真人

真人は、妹の若松みゆきとの再会より先に、学年一の美女・鹿島みゆきと出会っています。そして、鹿島みゆきに恋心を抱いていたのも、妹みゆきとの出会いよりも前です。

ボーイフレンドとして、しとやかで才女で美女のあこがれの同級生とようやく付き合うことが出来るようになった真人ですが、そこに元気で明るくかわいい妹との同居生活が始まります。

妹みゆきに対しては、惹かれつつも事あるごとに兄として振る舞わなければならないという自制が真人には働いてしまいます。

ガールフレンドの鹿島とはうまくいきつつ、たびたび妹を優先する行動を取います。真人自身が自分の心を整理できないまま、3人の時は過ぎていきます。

 

高校・大学と成長していき、次第に続けられなくなる三角関係

真人と再開した時に中学生だった妹みゆきは、ひとつ年上の真人のいる高校に受験して入学、同じ高校で高校生活を送り、学校の帰りには兄の帰りをバス停で待ち、楽しそうに一緒に買い物に出かけたりします。

一方、真人は高校では鹿島と付き合ってキスも経験しますが、卒業後は大学受験に失敗して才女である鹿島との別れを覚悟して、失意のうちに浪人生活に入ります。

真人に付き合うようにしてわざと大学進学を1年遅らせた鹿島は、真人と一緒に青春を生きる覚悟をし、一年浪人してふたりで同じ大学に進みます。

三角関係でありながら、妹と真人の関係、真人と鹿島の関係、それぞれがお互いを思っての純粋な気持ちでした。しかし成長にしたがい、このままの関係を続けていけなくなる決断を迫られる事件が妹のみゆきに起きて…

 

三角関係を描きながらメロドラマにならない爽やかさ

 漫画「みゆき」の特徴は、色々な出来事が起きて展開していくドラマにあるのではなく、青春期の恋愛特有の初々しい恋愛のときめきそのものを描いた点にあるのではないでしょうか。

校門で好きな人が待っていて、自分を見つけると笑顔で寄ってきて腕を組んできてくれる。

恋人と一緒に喫茶店に入って、笑顔で話をする。

夏休みに、友達や恋人とみんなで一緒に海に出かける。

まだ恋人がいない中高生は「みゆき」に描かれた恋愛のこうしたささやかな幸福に憧れ、大人になってから読み返す人は、自分が若いころにした恋愛はこういう感触だったと思い出す、そんな初々しいときめきを持ったラブ・ストーリーだと思います。

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