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映画『永い言い訳』”不貞行為の罪と罰”揺れる感情がひしひしと伝わる

【私なりのイントロダクション】

妻が旅行先で友人と一緒に事故に遭い、命を落としている頃、夫は自宅で不倫していた。

子供がいない夫婦に訪れた突然の別れ。”不倫はなぜ罪なのか?”

『ゆれる』西川美和監督が

悲しみの表現すら上手くできず、じわじわと自責の念に襲われていく男の感情を繊細に表現している。

【あらすじ】

人気小説家の津村啓こと衣笠幸夫(本木雅弘)の妻で美容院を経営している夏子(深津絵里)は、バスの事故によりこの世を去ってしまう。しかし夫婦には愛情はなく、幸夫は悲しむことができない。そんなある日、幸夫は夏子の親友で旅行中の事故で共に命を落としたゆき(堀内敬子)の夫・大宮陽一(竹原ピストル)に会う。その後幸夫は、大宮の家に通い、幼い子供たちの面倒を見ることになる。

Yahoo!映画より)

【みどころ】

西川美和監督の代表作、『ゆれる』では、そのタイトル通り、”吊り橋のゆれ”そして登場人物たちの”感情のゆれ”を静かに表現。

今回の『永い言い訳』でも

音のない”無の表現”から、主人公のリアルな虚無感がじわじわと感じられる。

 

”どこからが浮気なのか?”

”不倫は罪なのか?”

そんな議論をするよりも、

「もしその行為に及んでいる間に、本来愛すべき人が死んでしまったら?」

償うことさえ許されない罪。
頭で考えるより、想像してみる方がはっきり答えが出る。

母親を亡くした子供の世話をすべく、大宮の家に通いはじめる幸夫の行為は、
一見罪滅ぼしのように見えるが、この時点ではまだ
妻を亡くした悲しみを感じることができない。

ところが、自分とは対照的に、
妻を失った悲しみを素直に表現する陽一と関わったことで、
妻の交友関係や本心を、死後、他人(陽一)の口から聞くことになり、
じわじわと自責の念と悲しみに襲われていく。

それらを台詞などの説明無しに、
幸夫の表情やしぐさ、そして伸びていく髪の長さ、
さらにはゆきの夫・大宮との対比で見事に表現。

”静の表現”からリアルな感情が手にとって感じられる良作です。

 

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