これからBLを読んでみたい入門編の作品からアニメ化されたBL、最近発売された漫画などおすすめのBL作品を10作紹介します。
花恋つらね 夏目 イサク
男の子がパンツ姿だったり、キャラクター同士が絡まってる表紙が多い最近のBL漫画の中で、普通の本屋で買える、レジに持ち込んでも気まずい思いをしないで済むBL漫画もいくつか欲しいですよね。
そこで、ツンデレキャラに定評のある夏目イサク先生の最新作、「花恋つらね」をご紹介します。
有望な若手歌舞伎役者、女形の惣五郎と立役の源助のお話です。どちらも同年代で梨園の御曹司同士。源助にライバル意識を燃やす惣五郎が、源助との夫婦役を演じることになり、ふたりで切磋琢磨していく、というのが1巻のおおまかなあらすじです。
表紙は赤を基調とした和風な作りで、ぱっと見ただけではあまりBL漫画に見えません。まだ2巻目ですので恋愛事情もそれほど進展はしませんが、ストーリーはしっかりBLです。由緒ある梨園の跡取りですので、結婚話など、今後の波乱も容易に想像できますので、今から期待大です。
とはいえライトな作風の作家さんですので、ドロドロしたストーリーがお好きな方には向かないかもしれません。逆に、これからBLデビューする方には大推薦いたします。是非恥ずかしがらずにレジまで持っていってみてください。
ひだまりが聴こえる 文乃 ゆき
この本はBLの成分としては薄いですが、高校の頃に高熱で患ってしまった突発性難聴の大学生の航平。人間不信や自分の難聴に対するうしろめたさにより心を閉ざすように人との接触を避け続けてきた彼。
性格が正反対の真っすぐで正義感が強く、そんな太一が航平の閉ざした心を解きほぐしていくのが面白いからです。
BLってだけではもったいない枠なので難聴の生きづらさなどがわかりやすく描かれているので一般の方のBLに偏見がない方にもおすすめできる内容だからです。
また、この本を正義感のある太一と出会うことによって航平の心情の変化が面白いなと思いました。読んで私は航平と太一の繋がりが濃ゆくてBLってこういう世界もあるんだなと感動したのもあるからです。人はそれぞれ生きづらさを抱えていますが、障害を持った方がどのようにしたら安心して生活できるのかとか考えされる内容にもなっています。
純情ロマンチカ 中村 春菊
中村春菊先生の大人気漫画の純情ロマンチカです。現在21巻まで出ています。
簡単なあらすじは主人公(高橋美咲)が高校生の時からのお話で、いろんな事情があり、兄の友人の(宇佐美秋彦)と一緒に住むことになる。
兄の友人の宇佐美はかなりの売れっ子作家で家事は一切できず、美咲は変わりに家事、洗濯など一通りのことをする。その生活の中で宇佐美は美咲を好きになっていく、美咲はというと・・・
認めないといった感じで、BLだけの話ではなく、学校での話やバイトの話、仕事関係の話などいろいろ凝った話も織り交ぜて書かれていて面白いです。
時には主人公や宇佐美の言葉でドキっとする場面や泣きそうになる場面もあります。
BLを読んだことがない人、これから読んでみたい人にはお勧めしたい一冊です。話の流れはゆっくりですが、ストーリー性はある作品なのですぐに入り込める作品です。
他の連載のスピンオフ作品も混ざっていたりするのでいろんな読み方ができます。
窮鼠はチーズの夢を見る 水城 せとな
「窮鼠はチーズの夢を見る」作者=水城せとな(小学館)
この続編に「俎上の鯉は二度跳ねる」というのもあり、あわせておすすめです。
主要登場人物は大伴恭平と今ヶ瀬渉のゲイカップル。ではなくて、恭平はもともとノンケだったのですが、再会した大学時代の後輩である渉に言い寄られてだんだんその気なっていくというストーリーです。
と言ってしまっては身も蓋もないのですが、ネームの一つ一つ、コマ割りの一つ一つに作者のセンスが感じられ、同時に「人生とは?」「愛の永遠性とは?」を問いかける深い内容となっています。
「恋愛は障害がある方が燃える」といいますが、ここではもともとストレートだった恭平と生粋のゲイである渉との温度差が障害となり、「こっちの方がノーマルだよな」と、何度もふらふらと女性の方に行きかける恭平。
そのたびに引き戻すのが渉の恭平への真摯な思いなのであり、恭平もだんだんその情にほだされていき、真剣に渉を愛するようになる過程自体にとてもリアリティーがあります。BL好きはもちろん、そうでない人にも偏見を捨ててぜひ読んでみてほしいコミックです。
花のみぞ知る 宝井 理人
「セブンデイズ」や「テンカウント」など美麗なイラストで大人気の作家・宝井理人先生のBL作品です。
ある晴れた日の大学構内で、法学部の有川洋一と農学部植物学専攻の御崎詔太は出会います。
後日、再び駅で出会った二人ですが、コンタクトを外していた有川は御崎のことを認識できずにいました。家に帰って眠ると有川は御崎の夢を見ます。何故か一度偶然出会っただけの御崎の夢を見るのか不思議に思った有川は、学校で御崎に思わず「君のことが好きなんだ」と言ってしまい、その後、御崎の所属する研究室に手伝いとして入ることになります。
過去のトラウマからあまり人と関わろうとしない御崎に人懐っこい有川はどんどん関わろうとします。そのうち心を開き始めた御崎がデレていくのが可愛いですし、いつも優しい御崎が嫉妬で当たりが強くなったり強引になってしまう様がかっこ良くキュンキュンします。
また、段々と有川が御崎への恋心を自覚していくところがもどかしいながらも応援したくなるところです。
くっつくまでに時間がかかるのでエロシーンはさほど多くありませんが、その数少ないエロシーンも心理描写が繊細だし、絵が綺麗なので見ごたえがあります。とても繊細なストーリー展開で、ストーリー重視でちょっぴりシリアスも好きだという方にはとってもオススメです。
俺の上司はGカップ 高田ロノジ
BL漫画が得意な高田ロノジさんの作品「俺の上司はGカップ ~深夜のスペシャルサービス残業~」は、仕事が有能でイケメンの上司・殿山課長。彼にはとある秘密がありました。
それはなんと、毎日、スーツの下に女性用下着(ブラジャー)を身に着けていることでした。この秘密を偶然知ってしまった部下・清田は、殿山課長にSっ気たっぷりの嫌がらせを始めるようになって...。やがて自然と想い合うようになった二人ですが、同じ会社ということもあり、数々の試練に遭遇します。これらの試練に二人はどう乗り越えていくのか、ぜひ本編でお楽しみください。
BL漫画に興味のなかった私ですが、まるで普通の恋愛漫画を読んでいるような気持ちで読み切ることができました。絵柄も綺麗で、ストーリーも絵柄も非常に読み応えがあります。とてもピュアで、清田と二人きりの時には、とても可愛らしい表情を見せる殿山課長。一方、部下でありながら殿山課長を責めることで自分も興奮してしまう清田。どちらの主人公も魅力たっぷりで、大満足の作品です。
少年よ耽美を描け ミキマキ
クラーク博士の言葉をもじった「少年よ耽美を描け」は読んでわかるようにシリアスな内容では無くBLギャグ漫画です。作者のミキマキは双子で漫画を描いておりストーリーと作画に分かれています。学生時代にはクラスが違うにもかかわらずお互い入れ替わり授業を受けていたという漫画のようなエピソードをコミックスで語っています。
そんな彼女達が作った主人公 モテ男の新葉 芹(あらばせり)は「BL漫画に時間を割きたい」という理由で女に振られ「BLってなんだ!?」という疑問からBLの魅力に取り憑かれ自らBL漫画を描き始めます。
友達の生徒会長やバンドマン、白い学ランを着た転校生、転校生のBL好き姉、金持ちのBLライバルなどキャラの濃いメンバーを巻き込みみんなでBL漫画を追求しています。
特に主人公の新葉芹の発想は普通ではなく毎度常人では思いつかない斬新なBL設定を思いつくのですがその発想力に画力がついていけず、悔しがる様がとてもおもしろいです。上手くない絵の加減を描くミキマキの絵も秀逸です。この漫画はBLをギャグ漫画に落とし込みBL好きではなくても読める素敵な漫画作品だと思います。
同級生 中村 明日美子
同級生は中村明日美子さんが書いているアニメ化もされたBL漫画。高校生の主人公・佐条利人(黒髪短髪・眼鏡・受け)と、もう一人の主人公草壁光(ゆるふわヘアー・陽気・攻め)が出会い、恋愛をして行く王道BL漫画です。
2人の心の内面を中心に描かれ、恋愛については勿論高校生らしく将来への不安も描かれ、心の温まる作品です。中村先生の絵がとても美しく、BLが始めての人でもその雰囲気だけで読めてしまうような「BL入門」とも言われています。これからBLを読んで見たいが、過激なものはちょっと抵抗がある…という人にはピッタリだと思います。
またアニメーション映画化もされ、佐条を野島健児さん、草壁を神谷浩史さんが担当し、中村先生の個性的で美しい絵が上手くアニメ化されています。漫画は一巻に当たる「同級生」、二巻に当たる「卒業生-冬-」、三巻に当たる「卒業生-冬-」の全三巻で完結。
スピンオフで佐条に横恋慕していた原先生のその後を描いた作品「原と空」(全一巻)と、佐条たちのその後を描いた「O.B.」(全二巻)が出ています。ドラマCDでも「同級生」「卒業生」「空と原」「O.B.」が出ていて、声優はアニメ映画と共通です。
あのこはソレを我慢できない 日塔てい
攻は本田秋哲大学二年生、高校時代怪我をしてサッカー部を引退した少しナイーブな青年、仲良くしていた友人に恋をしていたけど言えぬまま大学生に、しかし恋をした相手はノンケの女性にだらしないサッカー男子。
受の松田淳也、思いを諦めようと大学は別にしようと自分がゲイだとカミングアウトするも淳也の軽いノリで受け入れられ、同じ大学を通いルームシェアをすることになる。
あのこはソレを我慢できないで注目するところはテンポの良いトーク、ボケと突っ込みが激しく、秋哲が淳也に振り回される姿はギャグマンガとしても通用する。
スポーツ青年を題材に扱ってるのできれいな筋肉が描かれている。普段の立ち姿だけでも絵になり、BLシーンの決め顔にドキっとさせられること間違いなし。
日塔ていさんの作品全般だがストーリー構成が丁寧でお互いに感情移入ができるように丁寧に作られている。BLシーン、イラスト、ストーリー全てにおいてかなり高密度な作品になっていておすすめです!
スニーキーレッド たなと
「スニーキーレッド」(作:たなと)は、マゾっ気がある大学生ミサキと、サドっ気があるヤンキーのハルの前途多難で、不器用な恋愛模様を描いた作品です。
「スニーキーレッド」は、1作目が「ボコり愛BL」というジャンルとして、瞬く間に人気が出た作品で、昨年待望の続編「スニーキーレッド Vol.2」、そして同作のサブキャラクターで、ミサキが働くコンビニスタッフの同僚、鈴木と本多のスピンオフ漫画「モーション エモーション」が発売されるまでの大人気作品となりました。
この作品は、従来のいわゆるSMを題材とした作品とは異なるものとなっています。MのミサキとSのハルという二人のSM関係が主題なのではなく、あくまでSMはテーマであり、本筋は二人の関係の変化、そしてすれ違いなどとなっています。
そのため、ストーリー展開は、他の一般的なBL作品に比べても、とても丁寧に描かれていて、じわじわと互いを理解し始める二人の様子を楽しむことができます。BLでありながら、受けのミサキも女々しいところはなく、非常にリアルな男子大学生として描かれているところも魅力の一つです。
さらに、SMを本軸に置いていないので、SMというテーマでありながら、比較的ライトに読むことが可能になっているので、従来のSMものは苦手という方にもオススメです。(ただし、暴力表現は若干含まれるので、そのような表現が苦手な方にはオススメしません。)
たなと先生のイラストも、独特で、どこかオシャレなタッチでありながら、読みやすいものとなっています。キャラクターも一人一人、個性的で、それでいて実在しても良さそうなリアルさがあります。そんな個性的なキャラクターたちも、メインの二人に限らず、皆それぞれ魅力的です。服装やヘアスタイル、そして喋り方の端々にそれぞれのキャラクターの人格が見えてくるようで、読んでいて周りのキャラクターのことまで気になってしまうほどです。
たなと先生のこの丁寧なキャラクター作りも今作の魅力の一つです。ぜひ、たなと先生が描く、不器用で真っ直ぐにはいかないミサキとハルの非日常的でありながら、リアルな駆け引きをお楽しみください。