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映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』Coccoの破壊力に負けないストーリー展開が見もの

【私なりのイントロダクション】

2016年公開、『リリィシュシュのすべて』ファン待望の

岩井俊二監督 最新作。

2001年、当時まだネットと言えば掲示板が主流だった頃、

多感な14歳の葛藤をインターネットの書き込みというツールを使って

見事に表現した『リリィシュシュのすべて』

この作品をきっかけに岩井俊二監督を知る人も多かったのではと思います。

その空気感をそのままに、

主人公を黒木華演じる女性に、そしてSNSというツールを巧みに使って、

人とのつながり、人間関係について考えさせられる作品が再び公開されました。

【ストーリー・あらすじ】

東京で派遣教員をしている皆川七海(黒木華)は、鉄也とSNSで知り合った後に結婚。結婚式の代理出席をなんでも屋の安室(綾野剛)に頼む。しかし、間もなく鉄也の浮気が明るみに。ところが七海が浮気をしたと義母に責められ、家を出ていくことになる。そんな七海に安室が結婚式の代理出席や、月給100万円の住み込みメイドのアルバイトを紹介。そこでメイド仲間で、型破りで自由な里中真白(Cocco)と出会う。

Yahoo!映画より)

【ネットレビューのそのまたレビュー】

ネットの評判は、総評や星どりの評価は高いものの

①”作品のメッセージがわからなかった”
②”主人公、七海のばかさ加減が嫌になった”

というマイナス意見も多い。

 

①”作品のメッセージがわからなかった”についての解釈

個人的には、作品としてのひとつの大きなメッセージは必ずしも必要とは限らないという印象でした。

なぜならそれが現実だからです。

多くの映画作品は、わかりやすいものほど、

グレイな感情に白黒つけたり、ものごとをきれいに善と悪に分けたりするのだけれど、

現実世界では、誰かにとっての”悪”は、誰かにとっての”善”になることがあります。

綾野剛さん演じる安室は、その善悪の二面性を見事に表現していて、そこにリアルを感じます。

主人公七海に向けられたのは、悪の側面。

物語が進んでいくにつれて、

ある人にとっては”善意”であることが見えてきて、

一般的な善悪がはっきりしている作品のように見ていると混乱してしまうと思います。

 

②”主人公、七海のばかさ加減が嫌になった”についての解釈

 

賢い人は、たくさんの人を疑って生きていく代償に、他人に騙されない人生を歩むのか?

主人公、七海は、

たくさん騙されて、それにも気づかず、人に裏切られても、裏切ることはできず、真の人間関係を自分のものにして人生を歩んでいる。

それがばかなのかどうか?

というところなのかなと思います。

事実七海は、

①リップヴァンウィンクルの花嫁になれた

②ひきこもりの教え子を見捨てず、彼女のかけがえのない存在になれた

この2つを実現していて、

安室との出会いをきっかけに、人生でかけがえのない出会いや経験をしていくのです。

鉄也との関係を続けるだけでは、得られなかったはずの貴重な経験。

 

 

映画公式サイトにある漫画家・石田イスさんのコメント

『大荒れの海

いっそ沈んでしまえば、

海底は、意外にも、

やさしく

佇んでいるのかもしれない』

という言葉がそれを巧みに表現してくれているように思います。

 

七海は沈みきって、静かな海底で、息をしている。

 

何より、当人はとんでもないことに巻き込まれていた事実を最後まで知らない。

全ての事は、

有る無しではなく、知っているか知らないかでしかない。

最後まで知らないでいるのなら、それで幸せなんじゃないかな。

騙されないように生きている人には見えない、景色と幸福が彼女には見えているんだと思います。

 

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